マフィンのお茶とお茶のクッキー
実際やるならほんとにお茶を入れて匂いでも演出したいなって思ってる
ミキ:男が嫌い
サエ:女の子可愛い女の子
犬 :名前は ジョン
サエの部屋
サエ、楽しそうに来客の準備をしている
時折虚空に向かって話しかける
サエ:なんか今日は楽しそうだね、ジョン
サエ:あ、ちょちょちょ、それ食べちゃだーめ
インターホン
サエ:来た!
パタパタとお出迎えに行く
入ってきたのはミキ、すぐにくっせぇって顔する
ミキ:お邪魔しま...(うっ)
サエ:あ、わかっちゃった?ミキが前好きって言ってたお茶入れてみたんだ、ブルーベリーマフィンのやつ
ミキ:あ、ありがとう
サエ:はりきってちょっといいクッキーも買ってきちゃったんだ~、ちょっと食べたけどすっごいおいしかったから楽しみにしてて
ミキ:へえ、どこの?
サエ:名前忘れたけど駅前のちょっと路地入ったとこにお菓子屋さんができててね、そこの
ミキ:(もぐもぐ)あ、紅茶クッキー
サエ:あ~~~まだお茶出してないのに!
ミキ:おいしいね
サエ:お行儀悪い!
ミキ:はいはい
サエ:もう...あ、クッキーまだあるからどんどん食べて良いよ
ミキ:やった、ごちになります
サエ、お茶を入れる
サエ:ね、すっごく良い匂いじゃない?
ミキ:あ...えっとさ......この部屋、なんか臭くない?
サエ:そう?自分じゃわかんないなぁ
ミキ:っていうかこれが本題だったんだけど
サエ:ええ~!
ミキ:...(もぐもぐ)実はヒロキから相談受けてて...最近サエが妙に臭い、みたいな
サエ:え~ヒロキが?直接言えば良いのに...
ミキ:なんか匂いが匂いだから言いにくかったらしくて、探り入れてきてって
サエ:匂いが匂いってなによ、そんな臭い?
ミキ:なんか、死体みたいな臭いって
沈黙
サエ:すごく、失礼だね
ミキ:いや、うん、最初聞いたとき私もよりにもよってサエにそんな言いがかり付けやがってぶっ殺すぞこのドグサレチンPと思ってたんだけど
サエ:下品
ミキ:でも実際結構匂うよ
サエ:あ~、やっぱり犬いるからじゃないかな
ミキ:犬?
サエ:ほら、そこに
サエが指すところには薄汚い毛皮がうち捨てられてる
ミキ:...犬?
サエ:半年くらい前に拾ってきたんだ、ジョンって言うの
ミキ:ジョン...?
サエ:似合わないって思ったでしょ。今はまだまだ子犬だから似合わないけど、これからもっと大きくなるらしいから、そのときに恥ずかしくない名前付けようと思って。かっこいいでしょ、ジョン
ミキ:...子犬なんだ
サエ:うん、どっちかというとタヌキにみえるけどね
ミキ:...そうだね
サエ:でも可愛いよね~すっごくおとなしいし
ミキ:うん、すごくおとなしいだろうね...てかここペットOKなんだ
サエ:はっきり書いてなかったから管理人さんに聞いてみたら、糞尿の始末をきちんとするならOKなんだって
ミキ:ゆるいね
サエ:ボロだもん
ミキ:でも、これだけ臭いとさすがに近所の人から苦情入らない?
サエ:!入るかも、どうしよう!
ミキ:でもまあまわりに住んでる人いなさそうだったけど
サエ:管理人さんもさすがにクレーム入ったら駄目っていうかも...どうしようどうしよう
ミキ:サエ?
サエ:飼えなくなったら困るしちょっとファブリーズ買ってくる!
ミキ:え、今?
サエ:コンビニ近いしすぐだから、ジョンと遊んでて!
ミキ:いやちょっと!
サエ、慌ただしく出て行く
ミキは薄汚い毛皮を見つめる
ミキ:...犬?これが?二次元の犬的な?
犬:いや、元はちゃんとトイプードルだったんだけど
ミキ:え...?犬って二次元化したら喋るんだ?
犬:こっち、こっち
ミキ:...ぎゃあああああああ!!!
犬:し、静かに!このアパートボロだから!
ミキ:きっしょ不審者死ね!!!
犬:やめて!管理人さん来ちゃう
ミキ:かんりにんさ~~~~~~~~ん!!!!
犬:追い出されるのサエだからほんとにやめて
ミキ:アーーーサエの名前を軽々しく呼ぶな!このゴミカスが!!!
犬:きゃいん
ミキ:は?
犬:あっ(口を押さえる)
ミキ:大の男がきゃいんとか恥ずかしくないの
犬:いや、あの、実は大の男じゃなくて、
ミキ:キモいほんとキモいサエが帰ってくる前に出て行ってついでに死んで
犬:や、ちょ、話聞いて.........あの、えっと、ボクがジョンなんだ!
ミキ:は?その顔でジョン?冗談きついわ
犬:僕も思う
ミキ:じゃあ改名すれば?なんでもいいけどさっさと出て行け
犬:でもご主人様が付けてくれた名前だし...
ミキ:.........性癖こじらせた人かぁ
犬:人っていうか、犬
ミキ:うん、そっかそっか
犬:名前はジョン
ミキ:そっか
犬:だいたい1歳、飼い主はサエだった
ミキ:サエを呼び捨てにすんな駄犬が
犬:とりささみがすきで骨のチャリンチャリン言う玩具がお気に入り
ミキ:ごめんそれいつまで続けんの?
犬:信じてくれないんだね...
ミキ:お前がやばい野郎だってことはよぉ~くわかったよ
犬:...僕のことは信じてくれなくても良いけど、話だけは聞いて欲しいんだ、これはサ
ミキ:あ?
犬:ご主人様のために大事なことだから、お願い
ミキ:......あと3分なら聞く、でもそれすぎたらすぐ出て行けよ不審者
犬:わかった。じゃあ...
ミキ:まって、タイマーセットするから
犬:...はい
セット
犬:言ったように、僕の名前はジョン、生後約一年の犬、だった。だった、けどちょっと前にうっかり死んじゃったんだよね
ミキ:まって(タイマー止める)死んだの?
犬:うん。たぶん?まあ元々体も弱かったし、子供だし、ちょっとしたことが命取りだった的な?
ミキ:じゃあ目の前にいるお前は
犬:幽霊?
ミキ:激アツじゃん
犬:話し続けて良い?
ミキ:あ、(タイマー再開)どうぞ
犬:死んじゃったはいいんだけど、サ...ご主人様はそのことにすごくショックを受けちゃったみたいで、しばらく抜け殻みたいになったと思ったら急になにもないところと話すようになっちゃったんだ
ミキ:サエ...
犬:僕がうっかり死んじゃったのが悪いんだけど、あんなご主人様見ていられない
ミキ:それは...
犬:お願い、ご主人様の目を覚まさせて!
ミキ:...(タイマー止める)
沈黙
ミキ:まあ、やってみるよ
犬:ありがとう
ミキ:でも、どうやって?
犬:うーん、僕が死んだって証拠を見せてみるとか?
ミキ:証拠?
犬:その......冷凍庫にまだ死体が入ってるから
ミキ:だからこんなに臭いのか!
犬:あんまりくさいって言われたら悲しくなっちゃう...
ミキ:あれ、てか死体が冷凍庫ならあそこの毛玉みたいなのは?
犬:もこもこポーチ
ミキ:...ほんとだ、ちょっと可愛い
犬:僕は?
ミキ:キモい
犬:ひどい
ミキ:そういえばあんたの姿ってサエに見えないの?自分で説明するのが手っ取り早くない?
犬:全然見えてないみたい。...ご主人様にとってはあの毛玉が僕になっちゃったみたい
ミキ:まあ見えててもこれが大好きな犬とは思いたくないよね
犬:えへ、大好きな犬だって
ミキ:うーん、じゃあ死体を見てもらうしかないのかなぁ
犬:もこもこポーチ開けちゃうとか
ミキ:サエ、トラウマにならないかな
犬:...くぅーん
ミキ:...うーん、難しいな
両者無言でクッキーを食べる
サエ、帰る
サエ:ただいま!
犬:おかえり!おかえり!おかえり!
犬、駆けより尻尾を振れども声をかけども変な踊りをしようともサエに気がついてもらえず、「ね?見えてないでしょ?」と言わんばかりにミキを見て肩をすくめる
サエ:じゃあ、いくね~しゅっしゅっしゅっしゅ~~~
犬:ぐぁああああああああ(悶絶)
ミキ:犬?!...あ、幽霊だから!
サエ:ミキ?どうしたの?
ミキ:あー、えっと、あんまりやるとよくないんじゃないかな、ほら、犬もいるし
サエ:あっ!ごめんジョン!!!
ミキ:まあ、でもある程度は大丈夫じゃない?殺虫剤でもないし
犬:(ハアハア)...ご主人様、ひどい
サエ:大丈夫?あ~結構かかっちゃってる...
ミキ:ちょっと、大丈夫?
犬:(ハアハア)僕のことは良いから、さあ、早くご主人様に死体を
ミキ:あっ...。うん
ミキ:あー!急にアイス食べたくなって来ちゃった!ごっめ~ん☆冷凍庫覗くね!
サエ:やめて!!
サエは過剰な反応をする
サエ:ひとんちの冷蔵庫勝手に覗かないってお母さんに言われなかったの?
ミキ:断り入れたし...
サエ:まだ良いって言ってないでしょ!
ミキ:...
サエ:私ははっきり言えるからいいけど、勝手に見られて嫌な思いしてもすぐには言い出せない人もいるんだよ。ミキは昔からそう。筆箱見せて~とか、気軽に人のものにさわろうとするんだから。そういうの本当によくないと思う。
ミキ:ごめん...
サエ:冷蔵庫の開け閉めの電気代気にする人もいるんだよ!
ミキ:...なんでそんなに気にするの?何か隠したい物でも
サエ:妙な勘ぐりはやめなさい!
ミキ:ごめんなさい
サエ:あとついでにいうとミキずっと口が悪くてお下品なことばっかりいうのどうにかしようよ、ちんPとかうんことかタンカスとか気軽に言うのは...
ミキ:ごめん、サエ!
ミキ、冷凍庫にダッシュ
サエ:だからやめてって言ってるでしょ!!!!
サエ、ミキをひっつかんでビンタ
サエ:ミキはひとの嫌がることがしたいの?趣味悪い!そんなひとだとは思わなかった!てかそもそもなんで当たり前のようにうちのアイス食べようとしてんのよ信じらんない
ミキ、犬とアイコンタクト「ねえ、むりなんだけど」「...ふぁいとだワン」
ミキ:...ごめん
サエ:分かればよし!
犬、お菓子をつまみ食い
サエ:は~、ジョンにはわるいけど、ファブリーズしたらちょっとすっきりしたかも。やっぱりちょっと臭かったのかな
ミキ:うん、だいぶ
サエ:教えてくれてありがとね、ミキ
ミキ:うん...
3人でもぐもぐ
犬が急にしきりに毛玉を指さし出す
ミキ:あっ...ねえ、犬、触ってみていい?
サエ:えー、嫌がらなかったら良いよ
ミキ:ありがとう
ミキ、そっとポーチを持ち上げ、なでる。そして勢いよくファスナーを開ける
ミキ:おおっと、残念でした~!犬じゃなくてポーチでした!
サエ:ミキ、何やってるの?
ミキ:え、だからポーチ
サエ:は?
ミキ:...ごめんなさい
サエ:いいから早く下ろしてあげて
サエ、ポーチをよしよししにいく(よしよし、こわかったね)
ミキ:(犬に小声で)ねえサエ絶対に認める気ないよ
犬:うーん...(もぐもぐ)
ミキ:(ぺしっ)もぐもぐもぐもぐしてんじゃないよ助けなさいよ
犬:そうはいってもできることは...
ミキ:無能
犬:だって犬だもの
ミキ:あ、てかあんた物に触って動かせるの?
犬:?うん
ミキ:それならアンタが死体持ってくれば良いじゃん
犬:...確かに!
ミキ:サエの気をそらしておくから、はやく!
犬:わん!
ミキ:...ねえ、サエ、えーっと、マジックとか興味ない?
サエ:え?マジック?
ミキ:人差し指と中指にヘアゴムを...
(以下略)
サエ:えー、すごーい!!
犬、机に凍った死体を置いておく(置いたらサエの横に正座してマジックを鑑賞する)
ミキと犬、目を合わせてうなずき合う
サエが机の上の死体に気がつく
サエ:あれ?これは?これもマジック?中身はなぁに?
ミキ:サエ...
サエ:これ、臭いね
ミキ:サエ、あのね
サエ:ん?
ミキなにかを言いかけるがやめる
ミキ:............うん、そうだね。捨ててこよっか
サエ:え、これなんだったの?中見ていい?
ミキ:よくわかんないけど、開けたら臭そうだからやめとこう
サエ:そうだね。でも今日ゴミの日じゃないんだけどどうしよう。管理人さんに聞いてくる
ミキ:...行ってらっしゃい
サエを見送るとミキはため息をついて倒れ込む
犬:ねえ、ちょっと、なんで終わった~みたいな反応してるの、まだ解決してなくない?
ミキ:そうだね
犬:ちょっと!
ミキ:うん、でも今問題なのは臭いだけだったし、もう解決でよくない?
犬:でも...
ミキ:...きっとまだ向き合うときではないんだよサエには
犬:でもさ
ミキ:いいじゃん、ちょっとくらい見て見ぬ振りしても
犬:あとで気がついたらもっとつらい思いするかも
ミキ:そうかもね
犬:だったらさぁ
ミキ:でもさ、今のサエはこのことを受け入れられると思う?
犬:...
ミキ:幻を見てでも目をそらしたい現実をさ、こんな風に突きつけて良いのかなって思っちゃった...それにその幻を見てる間、サエは幸せでいられるんでしょ?
犬:...そうだけど
ミキ:なら、もうそれでいいじゃん
犬:.........それでも
ミキ:うるさいな
ミキ、ファブリーズを乱射
犬は悲しそうに消える
ミキはゆっくりとお茶をいれて飲む